学芸員室の雑記帳

十館十色~企業博物館その(2)~

よく、「日本一高い山、日本一長い川など“1番目”は有名だが、意外と“2番目”は知られていない…」という話を目にします。たしかに、2番目は知名度がガクンと下がりますね。今回はいつも陰に隠れがちな次席の方にスポットライトを当ててみます。

当館の企業博物館リストを都道府県別で数値化すると、館数が最も多いのは東京。唯一の3桁台です。こちらは予想通りといった感じでしょうか。では2番目に多いのはどこでしょう。東京、と聞けば次に続くのは大阪か、歴史ある企業のイメージで京都か、土地の広さで北海道か…。

僅差ですが、実は2番目は愛知。ランキングを作成したときに、たしかに名古屋は大都市だけど、どんな理由があるのだろう?と興味を惹かれました。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、愛知はモノづくりが盛んな地域で、トヨタ自動車の傘下・提携企業を含め大小さまざまなモノづくり企業の拠点があります。企業博物館は製造業に多い傾向がありますので、2番目というのも納得です。

(帝国データバンク史料館調べ 2022年6月時点)

このモノづくりの歴史は古く、戦国時代までさかのぼります。戦国大名・織田信長が全国から集めた職人に技を競わせ、各職人のトップに「天下一」の称号を与えました。この称号を得るため職人が集い、その技術が愛知に根付いたといわれています。

また、日本列島の中央に位置することで東西への交通アクセスもよく、海に面しているため輸出入の利便性も兼ね備えています。こうした材料・商品の流通に欠かすことのできないアクセスの良さ、他にも工場用地の確保、労働者の集積など、さまざまな要因が愛知の製造業を発展させることとなりました。県内の企業博物館も、約7割が製造業関連となっています。モノづくり県、さすがです。

いつか企業博物館めぐりの旅として愛知を訪れてみたいですね。

 

余談になります。冒頭で2番目にスポットライトを…というお話をしたうえで恐縮ですが、今回もっとも驚いたのは、調べものをしている途中で見つけた「対人口比 都道府県別 博物館ランキング」。第1位から予想外の連続です。気になる方は、順位を予想しながら「博物館 多い県」で調べてみてください。“対人口比”がミソです。