学芸員室の雑記帳

伝えるための試行錯誤

毎年、年度始めに学芸員としての自己目標をリストアップしています。
今年は(今年も)、その中のひとつに「ご来館いただいた方の目的や所属、年齢に合わせた解説を行う」と掲げました。

日ごろから、お客様のご見学の様子を見ながら、説明の方法や、取り上げるエピソードを変えて対応するよう心がけてはいるのですが…。反応は千差万別。事後に、もっとわかりやすい説明や紹介の方法があったのではと反省することも多々あり、試行錯誤しながら研鑽を積んでいます。

先日は、中学3年生のお客様がご来館くださいました。学校のHPに掲載されていたシラバスによると、社会科で経済について学習するのは、3年生の3学期とのこと。つまり、今回当館が担うのは、帝国データバンクと信用調査の紹介を通して、日本の経済活動の一端を、授業に先駆け説明するという重要任務です。年々大きく感じている10代とのジェネレーションギャップも考慮しつつ、扱う一つひとつの用語や事柄を、いかに中学生に分かりやすく伝えるか。何度も検討を繰り返し、お迎えの準備を進めました。

実際のご案内では、信用調査の流れを図式化して説明したり、身近な企業名や、地元の企業名を例にあげたり、当社を身近に感じていただけるよう、支店が中学校の近くにあれば、地図で場所を確認して紹介したり…。興味を持っていただくためのフックをたくさんちりばめる試みをしました。何かひとつでも記憶に残していただくことができたら、とても嬉しく思います。

ちなみに、中学生のみなさんがお帰りになったあと、当館展示物の「フロッピーディスク」を初めて見聞きしたとおっしゃっていたのを、ふいに思い出しました。PCはもう使いこなされている様子でしたので、ファイルの上書き保存のマークにその名残があることも伝えればよかったなと。大変些末なことではありますが、記憶の点と点がつながるきっかけとなったかも知れません。

来館者に寄り添った端的かつ的を射たご案内を目指して。試行錯誤の日々はまだまだ続きそうです。