学芸員室の雑記帳

お酒でつなぐ展示と展示

周五郎展も明日まで。

展示では、周五郎を通して当時の帝国興信所の様子も垣間見ることができました。帝国興信所時代の周五郎のエピソードがいくつか残っていますが、特に面白かったのは、周五郎が宮本武蔵をおちょくった内容の短編(後の『よじょう』につながる)を書いて所長(初代)に見せたところ、武蔵を「剣聖」と仰ぐ所長が激怒したという話。当時の所長と社員の距離の近さがうかがえます。周五郎の酒好きは有名ですが、同僚の話では仕事中も机の下に一升瓶をおいて、一杯やりながら原稿を書いていたそうで、片や禁酒会を結成し、厳しく社員の飲酒を取り締まっていた所長とは反りが合わなかっただろうと思われます。

お酒といえば、前々回の「十館十色」で灘五郷のお酒の企業博物館を紹介していました。兵庫県には老舗も多く、そのなかでも「清酒製造」が大きな割合を占めています。老舗に「清酒製造」が多いのは全国的な傾向ですが、都道府県別に老舗の業種構成を見ていくと、各地の特色が浮かび上がってきます。

来週11/1からの老舗の展示では、老舗の多い国や都道府県、業種など、老舗の「いま」の姿を描きます。また、現役の調査員が「知ってもらいたい」老舗として挙げた88社の中から、特に10社にフォーカスし、老舗としての取り組みや大切にしていることばなどを紹介します。

無理やりお酒でつなぎましたが、次回展示へのバトンタッチ。ぜひ、「老舗の姿 2022」も展示室にてお楽しみください。