学芸員室の雑記帳

十館十色~企業博物館その(7)~

春の陽気を感じ、連休の予定を考え始めるころ。皆さまはお出かけ・旅行をする際、入念に下調べをする派でしょうか。それとも、当日の運に任せる派でしょうか。

気になったことはすぐ検索!が便利になった現代。お店の場所だけでなく、時間・値段・雰囲気・混雑状況・注意事項・近隣の施設など、検索をすると無限に情報が出てきます。情報を得やすくなったために、下調べをしっかりする方は以前より増えたように感じます。

企業博物館の形式は多種多様で、ひとつの定義で分類するのは難しいですが、一般利用や社会的評価を前提とした博物館ではいくつかの「企業博物館の社会的役割」を定めています(社内の研究開発のため、社員の研修のため…など、一般利用が目的ではない館もあります)。それらを実施するためのひとつの手段として、「特性を活かしたアプローチ」が必要になってきます。とくに企業博物館は多種多様であるがゆえに、館名だけではイメージがつきにくいので、ホームページおよび館内情報の充実が大切になってきます。

おうち時間という言葉がはやり始めたころ、展示を疑似見学できるVRを取り入れた博物館が急増しました。おうちに居ながら遠方の博物館の見学もかなう画期的なシステムです。また、YouTubeチャンネルを開設し、動画で展示の紹介をおこなっているところも増えているようです。これらは現代の下調べ傾向にマッチし、館の特性をアピールしつつ雰囲気もわかりやすいため、来館意欲の向上に一役買っています。加えて博物館の空間全体のデジタルアーカイブにもなりそうです。

以下、ホームページにVRを活用している企業博物館のなかで、個人的に実際にVRを見ることで来館意欲を高められたと感じたものをご紹介いたします。

 

イオン歴史館

啓真館 コミュニケーションプラザ

三菱UFJ信託銀行 信託博物館

 

しかし、展示の入れ替えがあった場合更新が必要になりますし、管理、維持も容易ではありません。情報社会におけるホームページの充実は、館の特性アピールとして今後も不可欠ですが、今あるものをどのように継続していくか、継続可能なものはなにかを模索していくことが必要です。企業博物館の多様さに期待しております。