学芸員室の雑記帳

袖振り合うも多生の縁

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行してまもなく2か月。おかげさまで当館では、個人のお客さまに加え、修学旅行や街歩きサークルなど、団体のお客さまのご来館が相次ぎました。また、ご近所の防衛省とセットで見学をされ、お出かけを楽しまれているというお声も最近よくお伺いするようになり、自粛ムードのご時勢から少しずつ解放されてきたことを実感する今日この頃です。

つい先日も、防衛省をご見学後、当館に来館されたお客さまをご案内する機会をいただきました。信用調査や当社の歴史をご紹介したあと、「人物往来コーナー」に展示している三島由紀夫のパネルもご案内し、1970年の防衛省での事件から遡ること3か月前、三島は、遺作となる『豊穣の海』の執筆にあたり、当時新富町にあった本社を訪れ、興信所に関する綿密な取材を行ったこと、そしてのちに偶然にも防衛省のすぐ近くに設立された当館にて、三島と当社のゆかりのエピソードをご紹介していることをお話ししました。すると…。
お客さまは「え!!それは不思議なご縁ですね~」ととても驚いていらっしゃるご様子でした。
防衛省で三島が演説をしたバルコニーや、籠城した旧陸軍大臣室の扉に残る刀傷をご覧になられた直後、当館にご来館くださったお客さまにとっては、三島の足跡をたどるような体験を興味深く感じてくださったようです。お帰りの際には「知り合いを連れてまた参ります」とおっしゃってくださいました。

「袖振り合うも多少のご縁」という言葉がありますが、当社120年の歴史に刻まれた「ご縁」をきっかけに、お客さまとの何気ない会話から、新たな「ご縁」が生まれていく最近の状況を大変うれしく感じています。
今後も、当館の展示を通してさまざまな「ご縁」が広がっていくことを願いつつ…。

みなさまのご来館を心よりお待ち申し上げております。