学芸員室の雑記帳

倒産情報の向こう側

現在史料館では、1月中旬から開催を予定しているテーマ展示の準備が大詰めを迎えています。前回の雑記帳でも触れていましたが、展示制作の資料として取り上げたのは、当社が発行している『日刊版帝国ニュース』。1964年に『日刊帝興情報』として創刊して以来、企業のリスク管理には欠かすことのできない倒産情報や企業動向などを現在も発信し続けている情報誌です。

創刊から来年で60年。今まで掲載された記事は膨大な数にのぼります。展示資料選定のため、一つひとつ読み解いていくという作業も、それ相当の根気を要しました。なかでも、時間をかけた作業のひとつが「記者日誌」の読み込みです。情報記者が当番制で執筆するこのコラムは、1999年10月から四半世紀続く長寿企画。改めてその足跡をたどるため、パネル原稿作成までに掲載されたコラムを、学芸員室のスタッフで手分けして丁寧に読み返しました。

その数、約4450回分…。

怒号が飛び交う債権者説明会、段ボールが山積みになっている取材先、言葉に詰まりながらも倒産に至った経緯を語る経営者。コラムには、倒産の裏側にあるリアルが綴られています。また、取材する記者たちの苦労も文章に滲んでいます。蜃気楼が見えそうな暑さの中を歩いて取材先に赴き、エレベーターの止まらなくなった階の現場に向かおうと、寒空の下、外階段を上がる。倒産した会社で置き去りにされた犬と目が合い、風に揺れる子どもの洗濯物を見て、その場にしばし立ち尽くす…。

「記者日誌」が伝える倒産情報の向こう側。展示では、数点取り上げ全文掲載します。帝国データバンクが発信する情報を、様々な角度からご紹介する展示になる予定です。
制作は今週から校正作業に入りました。どうぞ年明けの開催にご期待ください。