学芸員室の雑記帳

十館十色~企業博物館その(13)~

皆さま、年の瀬をいかがお過ごしでしょうか。新年を迎える仕度でご多忙のことかと存じますが、どうぞご自愛くださいませ。

コロナ禍から一区切りつき、修学旅行生や街歩きなど、団体様のご予約が増えたように感じます。また、JR東日本四ツ谷駅主催イベント「駅からハイキング」では、2日間で約850人のお客様にご来館いただきました。今年も1年間、たくさんの方にご来館いただきまして、誠にありがとうございました。

さて、今回の雑記帳は「たくさんの」をテーマにしたいと思います。企業博物館を運営する企業は全国で600社以上ありますが、その中にはひとつの企業でたくさん、つまり複数館運営しているところもあります。では、それらにはどのような傾向があるのでしょうか。

 

同一企業(同一社名に限る)において、企業博物館が複数ある企業は67社。全体の1割程度となります。複数といっても、2館のところもあれば、5館、6館、12館…など、館数はそれぞれ異なります。

もっとも割合が高かったのは2館で、複数館運営する企業のうち51社がこの館数となりました。館数が増えるにつれて企業数は減り、5館以上は1社ずつのみになります。(8~11館の企業は無し)

同一企業が複数となると、その展示内容や設置理由が気になるものです。確認したところ、工場や事業所ごとに博物館があり、同じ系統の展示内容である同系統型と、製品の歴史、創業者の歴史、ショールームなど、展示内容ごとに施設を分けている多系統型の2種類あることがわかりました。

例えば12館リストアップされている電源開発株式会社(J-POWER)では、各地の発電所に設置し、おもに発電所の仕組みやダムの役割を展示しています。展示内容や目的が共通しているため、同系統型に分類しました。

そのため、工場や事業所ごとに設置する同系統型のほうが館数が増えやすいと予想し、言い換えれば、館数が多くなれば同系統型の割合も増えているのではないか…などとイメージしていましたが、思い通りにはいかず。

データの母数が少ないのもありますが、分類したところ大きな差はなく、同系統型も多系統型も、それぞれ同じくらいの数値となりました。2館でも同系統型が半数近くあり、7館でも多系統型の企業もあります。データ分析の難しいところですが、これは「館数は系統分類に影響していない」という結果にたどり着けたので多少の収穫はあったように思います。

企業博物館の分析としてはまだまだ未熟ではありますが、今後も地道に頑張っていきたいと思いますので、どうぞお付き合いくださいませ。それでは、来年も、素晴らしい年になりますよう願っております。どうぞよいお年をお迎えください。