学芸員室の雑記帳

会社の歴史

開催中の企画展にはこれまでよりも多くの方にご来館いただき、「倒産」というテーマへの関心の高さを感じております。事業継承を見据える経営者から経済を学ぶ学生まで幅広い層の方々が来館し、それぞれの視点で展示を見学されています。

来館者には自社の社員も含まれます。企業博物館として自社の歴史を社員に伝えることも史料館の役割の一つです。新入社員や中途入社社員の研修初日には、かなりの時間を割いて史料館研修が組み込まれています。研修では、展示見学やモニター講義を通して、創業者の想いから企業理念まで、信用調査の意義を問い直します。中途入社者の研修後のアンケートには、会社の歴史をここまで丁寧に聞いたのは前職含め初めてで新鮮だったという感想もあり、比較的歴史研修をしっかり行っている部類に入るようです。

新入社員は研修初日の緊張のなか、業務内容もほとんどわからないまま多くの情報に触れるので、後々どれほど記憶に残っているか疑問ですが(数年後にはほとんど忘れているという声もちらほら)、歴史ある会社だということを知ってもらうだけでまずは十分かと思います。最近、エンゲージメント教育の一環で若手社員の見学や、これまで見学の機会のなかった従業員へ案内をする機会が増えてきました。業務に携わってから改めて触れる会社の歴史は、生きた学びとしてより深く腑に落ちるようです。日々の業務をこなすことで手いっぱいななか、一度立ち止まり原点に立ち返る場になれれば、史料館冥利につきます。

今回の企画展開催に伴い、社内向けに展示室開放のアナウンスをし、ささやかな内覧会も催しました。本日午後には中途入社社員の研修が予定されています。今回は、創業者が渋沢栄一に言われたということばを新たに研修資料に追加しました。

「興信事業(信用調査業)というものは一私企業であると同時に、半公共的な使命と責任があることを肝に銘じて精進しなさい」

肝に銘じて精進したいと思います。