学芸員室の雑記帳

富士は山の脱俗せるものなり

新型コロナウイルス感染症の位置づけが「5類感染症」に変更され、5月8日で1年を迎えます。2023年の訪日外国人旅行者数は約2,506万人、コロナ禍前の2019年の8割に回復し、外国人観光客を見ない日はないほどです。知人が先月末に桜の満開を迎えた河口湖を訪れた際にも、日本一の雄大な富士山の姿を求め、インバウンドで溢れていたと聞きます。国境を超えて世界の人々を魅了する世界文化遺産・富士山の偉大さを改めて感じます。

さて、弊社で3大モットーの一つとしている「脱俗主義」、初代・後藤武夫は富士山をなぞらえ、「富士は山の脱俗せるものなり。英傑は人の脱俗せるものなり。普通以上即ち脱俗的の大常識を有し、普通以上即ち脱俗的の大活動をなすもの即ちこれなり。帝国興信所は興信所中の富士たるべく、優者たるべく、帝国興信所支所は支所中の富士たるべく、優者たるべく、帝国興信所所員は所員の富士たるべく、優者たるべしというにあり、嗚呼脱俗なる哉、脱俗なる哉、脱俗的言動は成功の秘訣たるを知らずや」と説明しています。数ある山の中でも、その高さと姿の美しさが圧倒的である富士山のように、また大勢の人の中でも英傑といわれる人物のように、帝国興信所も支所も所員も群俗に紛れることなく、世間から仰ぎ見られる存在とならなくてはならない、これが「脱俗」の意味するところで、現在も弊社の中では受け継がれています。

当館では、今月21日からテーマ展示「渋沢栄一と信用調査業」を開催します。「近代日本経済の父」と称される渋沢栄一が信用調査業に残した大きな足跡と、当社の前身帝国興信所とのゆかりのエピソードなどをご紹介しますが、初代が渋沢栄一翁の薫陶を受け、弊社で受け継がれている3大モットーの思いも、渋沢の信用調査への期待と一緒に、社内外にお伝えしていきたいと思います。
どうか、この展示が富士山のように皆さまを魅了できますように!と願いつつ…‥。